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日々徒然。過去モノ放出〜。
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たまにはこんなのも。
◎小説 「雪桜」


「すっげえ…もう桜が咲いてんだ。」
松山はここ東邦学園の高等部男子寮の中庭で、満開の桜のもと、ため息混じりにそう言った。
今は3月下旬。ここ最近の暖かな気候のせいか、例年より早く満開になった桜が中庭に所狭しと並んでいる。
「…その割には、なんか寒くねえか?」
ぶるっと肩をひとつ震わせ、松山は自分の体を両手で抱き締めるようにして後ろを振り返った。
その視線の先には、腕組みをしたままこちらを睨んでいる日向がいた。
「お前が来たからだろ。この間までは暖かかったのによ。ったく、冷気持ち込みやがって。」
「なんだよ、さっきから…。俺が来たのがそんなに嫌かよ。」
花曇りの空に、冷たい風が吹く今日は今にも雨が降り出しそうだった。
「ああ、ムカツクな。お前のその清々しいツラ見てるとな。」
相変わらず日向は松山を睨んだまま、めずらしく絡むような口調で言った。
「それに…。この俺サマが来いって言ってやったのに断るなんて。」
満開の桜とは不似合いな冷たい北風が、向かい合う二人の間を通り抜けた。夕暮れも近付き徐々に下がる気温が、今こうして冷ややかに向かい合うお互いの気持ちを、さらに冷たくしてしまうようだった。

「おい……。俺はお前に、来い、なんて言われた覚えはないぞ。」
「ああ、そうかよ。てめぇがニブくて気付かなかったんだろ。」
「きさま…。」

空気はさらに不穏な気配を漂わせる。きつい松山の眼と、鋭い日向の視線がぶつかり合う。お互い、その瞳の中の真意を探ろうとするが、分からない。
どれくらいの沈黙が流れたか。
しかし、その場の空気には不似合いな、はらはらと可憐に舞い散る桜の花びらを前に二人の闘争心はしだいに薄れるのだった。

「……あほらし。俺、もう行くぜ。きれいな桜、案内してくれてありがとよ。」
すっと日向の脇を通り過ぎようとする松山。日向はその松山の肩をつかみ、意を決したかのように、言った。
「……本当に、東邦には来ないのか。」
その眼は今までにない程、真剣な色を帯びていた。松山はその視線から逃れるように、顔を背けた。
「だからそう言ってんだろ。今日だって、断るために小泉さんとこへ来たんだ。」
日向の手を振り払って、松山は強く言い放った。
「もう、決めたんだよ。」
ひときわ強い北風が吹き、散った桜の花びらが庭の隅でつむじ風にまかれて、くるくると回っていた。


つづく?
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このブログは本家Nostalgiaの分家日記でした。
本家はC翼の松山光ファンサイト(松小次メイン)でした。

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